私と司法の関係(2)


 大学卒業後、鉄鋼メーカーに就職した私は主に人事・労務畑を経験したものの、法律そのものを扱う部署や仕事には無縁な生活でした。

 それが数回の転職を経て、丁度50歳を迎えた時期に岡山で知人の弁護士から「法テラス」という組織の新設に伴い、岡山拠点での事務局長ポストへの応募という話が舞い込んできました。

 当初、私は当該弁護士に「お気遣いは嬉しいが、学生時代にまともに法律の勉強をしておらず、法務省管轄の法人では荷が重い」と答えたのですが、「法律事務そのものは契約弁護士等が扱うので心配いらない。事務局長は労務管理と金庫番をしてくれれば良い」との説明に安堵し、法務省での採用面接等を経て新しい組織の立ち上げに加わりました。

 「法テラス」は正式名称を「日本司法支援センター」と称し、小泉政権下での司法制度改革の一環で施行された総合法律支援法を根拠法に国によって設置された法人で、その目的は一言で云えば、国民がより司法制度を利用しやすくするためのサービス提供を行うというものです。

 具体的には、経済的弱者が弁護士等の法律相談を無料で受けられたり、調停や訴訟等の司法手続き利用時の弁護士費用等の立替などを行うほか、簡単な相談なら電話でコールセンター経由で情報提供してもらえるという、与党発案にしては珍しく?国民寄りの制度運営を行う機構で、その他の司法制度改革(裁判員制度、ロースクール制度)が厳しく批判されているなかにあって、概ね順調な推移を辿っていると評価されています。

 しかし私は、法務省の思惑と法曹界との利害調整の中で妥協案的に作られた組織であり、額面の美辞麗句・理想論に惑わされてはいけない・・と10年間に及ぶ勤務で実感しました。

 その一つの傍証が、内部の人事・組織体制の問題です。法テラスは設立当初、私のような民間出身者を中間管理職として積極的に登用し、第三セクターのような官民融合のメリットを志向する組織と思われたのですが、じきにそれは「幻想」であることが分かります。

 東京本部の幹部管理職は基本的に官僚出身者もしくは現職裁判官や検事等の出向者で占められ、設立後、数年経ってもプロパー採用者が登用されることは殆どありませんでした。

 東北大震災に伴う福島第一原発事故の処理を巡る過程で、国や原発メーカー等で構成される「原発ムラ」と呼ばれる閉鎖的な集団の存在が明らかになりましたが、司法の「業界」においてもまさに「司法ムラ」と呼ぶことの出来る特殊で排他的な集団の存在を実感することなりました。

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